発達障がいとは

平成17年4月に施行された 「発達障害者支援法」において、発達障がいとは、 「自閉症、アスペルガー 症候群 その他の広汎性発達障がい、学習障がい(LD)、 注意欠陥多動性障がい(AD/HD) その他これに類する脳機能障がいであって その症状が通常低年齢において 発現するもの」と定義されています 。

「しつけ」や「教育」、本人の「努力不足」が
原因ではない。

発達障がいは、生まれつき脳の使い方(情報処理の方法)が 違っていると推測されています。


    発達障がいは、外見からは分かりにくい。
  • 発達障がいは、行動の特徴などの観察から診断されます。 そのため、時に周りの人からは、行動や態度で、 「自分勝手」「変わった人」に見られてしまう事があります。 また、家庭や学校生活の中で、失敗してしまう場面 、 叱責される場面が多くなってしまうため、 「どんなに頑張ってもうまくいかない」 と否定的な自己イメージを持つ場合があります。
  • 発達障がいは、「病気」ではない。
  • 「病気が治る」という意味では、「発達障がい」が治るという事はありません。
    しかし、早期からの適切な支援や周囲の理解があれば、その子の持っている力を十分に伸ばしていく事ができます。
  • 発達障がいは、発達の仕方に『ちがい』がある。
  • 発達障がいは、他の多くの人とはちがう認知や学習の仕方があります。 つまり、発達(成長)しないのではなく、ちがう発達の仕方がある、他の人とはちがう育て方があるという事を意味します。

自閉症スペクトラムって?

自閉症、アスペルガー症候群、広汎性 発達障がいをひとつの連続体(スペクトラム )の中の 障がいとして 、「自閉症スペクトラム」と 呼ぶようになってきました 。 それは以下のような行動の特徴があります。

社会性や対人関係の特徴
表情や仕草の使い方、読み取り方に独特さがある
相手の気持ちを推測する事が難しい
場面、状況を読み取る事が難しい
自分の外見や言動が相手に与える印象、影響に気付きにくい
コミュニケーションの特徴
言葉でのコミュニケーションの困難さ
言葉の意味や意図を読み取る事の難しさ
→字義通り(言葉そのままの意味)に理解する
冗談や比喩などが分かりにくい
自分の気持ちを的確に伝えられない
独特な表現や言い回し
常同的な行動や思考、興味の偏り(想像力の特徴)
未経験な事、目に見えない事の想像が困難
物事の流れを予測したり、禁止の先にある行動を想像する事が難しい
変化に対する不安や想像のズレ、困難さ
→同じ手順や方法に強くこだわる
→経験した事をちがう環境で行ったり、応用したりする事が難しい
興味関心の対象や幅が極端に狭い、強い
年齢に合わない遊び
(ごっこ遊びを滅多にしない、おもちゃ1つに対し1つの遊びを好む など)
                     
感覚の特異:外部からの様々な刺激を処理する事に困難さがある。
特定の感覚(視覚・聴覚・臭覚・味覚・皮膚感覚等)に対する反応の違い(敏感さ、鈍感さ)
刺激を取捨選択して受け取る事が難しい。(一度に色んな刺激を受け止めて混乱する。)
これらの状況が、本人の調子や音などの種類によって、様々に見せる様子が変わります。

例えば…
空調の音、車の音、人の話し声が聞き分けられない
蛍光灯の光がチカチカして、目を開けているのがツライ
色々な味や食感が混ざると美味しいと感じられない
<特性に合わせた支援の工夫>

伝え方の工夫
話し言葉だけでなく、得意な視覚的な方法(文字や絵、写真で示す等)を用いて伝える。
抽象的な表現ではなく、具体的な表現で。
  ×「ちゃんと歩いて」
    →「お母さんと手をつないで」(行動を伝える)

  ×「きれいにして」
    →「机を2回拭いて」(回数を伝える)   など
環境を整える
見通しの持てる環境
「いつ、なにを、どれくらい、つぎに」が分かるように。
時間の流れ、生活の流れを視覚的に伝える。
   →スケジュールや手順書の活用
   →タイマーや砂時計等の道具の活用

活動の意味がわかりやすい環境
場所と活動の意味を一致させてあげる。(一つの場所を多目的に使わない。)
  (例)食卓→食事、学習机→勉強、ソファ→テレビ、トイレ→排泄   など
    ※空間を分けるだけでなく、座布団やランチョンマット等で活動の意味を伝える方法もあります。
得意や興味関心を生かす
お子さんの興味のあるもの、好きなものを取り入れる。
(例)自分の物が分かるように持ち物に好きなキャラクターのシールを貼る。
   病院など待ち時間が長い場所に行く時には、好きなおもちゃや本を持って行ったり
   車で好きな音楽を聴いたり、DVDを見て待つ。   など

経験を通して学ぶ
(例)初めての場所や活動を行う時には、事前に写真などで確認したり、見学をする。
  家で上手に出来るようになった事を、園や学校でやってみる等、少しずつ経験を広げる。
感覚への配慮:我慢するよりも、楽に過ごせる工夫を身に付ける事が必要です。
音の刺激への配慮・・・イヤーマフ(ヘッドホンのように耳に装着する事で、機械音等を防音します)、 耳栓、イヤホン   など

光の刺激への配慮・・・サングラス、LEDや間接照明(蛍光灯の光が辛い場合に有効です)   など
(例)初めての場所や活動を行う時には、事前に写真などで確認したり、見学をする。

味の刺激への配慮・・・カレーとご飯を別々のお皿に入れる等、味が混ざらないよう工夫。
特定の苦手な味(酸味、苦味、辛味など)がある時は、無理せず、好きな味付けで(調理方法)で。

注意欠陥多動性障がい(AD/HD)とは

注意力を持続する事が難しいもしくは、年齢や発達レベルに見合わない多動性や衝動性が主な特徴です。
以下のような症状が、通常7歳以前に現れると言われています。
不注意さ
集中できない
うっかり同じ間違いを繰り返してしまう
忘れ物が多い
持ち物をなくす   など
多動性
待つことが苦手
じっとしていられない
おしゃべりが止まらない   など
衝動性
考えるよりも先に動いてしまう
せっかちでイライラしてしまう
約束や決まり事を守れない   など

✽不注意さが目立つタイプ、多動性や衝動性が目立つタイプ、3つの特性を合わせ持つタイプがあります。
<特性に合わせた支援の工夫>

集中しやすい環境づくり
部屋の整理整頓。使わないものは見えないように。
伝え方の工夫:簡潔に、視覚的に
1つずつ指示する。思い出せるように書くなどして指示を残しておく。
「やりきる」経験:活動量、工程の調整
「最後までできない」ではなく、「△分もできている」
その時の子どもに合った量や時間でできる事から始めましょう。
やりきる経験の中で、子どもは少しずつできる事を増やしていきます。
褒める!
できた事を具体的に褒める。ポイントでご褒美も有効。
<こんなとき、どうしたらいいの?>

Q. 注意をするとすぐに大声を出したり、暴れたりします。どんなふうに伝えたら、聞いてくれるの?

A. まず、お子さまの行動の理由を尋ねてみてください。
「何でこんな事するの(しないの)!」ではなく、「何がしたいの(したかったの)?」と、気持ちを聞いてあげてください。そのうえで、正しい方法や行動を伝えるようにします。
行動を伝える時は、絵や写真など視覚的な情報もあると、言葉だけで伝えるよりもわかりやすいです。
また、興奮してしまった時は、刺激(物、音)の少ない場所に移動する・待つなど、お子さまの気持ちが落ち着いてから、関わりをもつ事が効果的な場合もあります。

Q. いろんなオモチャを部屋中に広げてしまいます。
使わないオモチャは片付けるように言っても、聞いてくれません。
どうすれば片付けてくれるようになりますか?

A. 片付けの方法を具体的に教えてあげてください。
「オモチャ片付けて」よりも、「本は棚に置いて」「ミニカーはカゴに入れて」と、一つ一つ具体的に伝えるとわかりやすいです。
合わせて、片付ける場所がすぐに分かるように、写真やシールで目印を付けてあげるとより分かりやすくなります。
また、オモチャ箱(棚)をカーテンなどで隠したり、遊ぶスペース(机など)からオモチャ箱(棚)が見えないようにしてあげると、一つの遊びに集中しやすくなります。
片付けやすいように、たくさんオモチャを出さない工夫もあるといいです。
<ADHDとお薬>

ADHDの症状への対応は、「環境の調整」、「行動療法」と並んで「薬物療法」があります。
ADHDでは、脳内の神経伝達物質であるドパミンやノルアドレナリンの作用が不足気味と言われており、
お薬は不足している神経伝達物質を増やす働きのあるメチルフェニデート(コンサータ)や
アトモキセチン(ストラテラ)が主に用いられています。
どちらもADHDの治療薬として、不注意、多動性、衝動性などの主な症状を改善する効果があると言われています。


お薬は、ADHDの主な症状に効くと言われていますが、お薬でADHDが「治る」というものではありません。
お薬の力を利用して、多動性・衝動性・不注意の症状をコントロールしながら、日常生活を過ごしやすくする
工夫(環境の調整や行動療法)も併せて取り組んでいくことが大切です。


学習障がい(LD)とは

学習障がい(Learning Disorders または Learning Disabilities)とは、全般的な知的発達に遅れはないが、
聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する など、学習に必要な能力のうち、特定の分野のみ困難さが
あります。
文字や数字の形を正しく認知することが難しく、書いたり、読んだりする事が上手にできない子がいます。
また、記憶することにも困難さがあり、漢字や九九を練習しても、思い出す事が上手にできない子もいます。
<特性に合わせた支援の工夫>

得意な認知処理の活用
聴覚の情報が得意な場合:録音したものを聞いて覚えたり、漢字練習などでは、
「森は木が三つ」など言語化して覚える事も有効です。

視覚の情報が得意な場:話し言葉や文字だけでなく、絵や写真、図があると理解しやすいです。
苦手なことをカバーする方法(手段)を身に付ける。
計算が苦手→計算機で確認をする。
字を書くのが苦手→PCで文書を作成する。
メモを取ることが苦手→写真など

大人になったら普通に使っているものが、ヒントになります!
<こんなとき、どうしたらいいの?>

Q. 勉強の意欲を持たせるにはどうしたらいいですか?

A. まずは周囲が本人の苦しい気持ちに目を向ける事です。
そして本人なりの勉強のやり方を認める事が大切です。
たとえ他の人とやり方が違っても、学ぶ事の楽しさ、できた事の達成感を経験する事から始めます。

Q. 漢字がうまくかけません。どんな学習方法がありますか?

A. 補助線のついたノートや方眼紙を使うと書きやすい場合もあります。
また書き順ごとに色が違う教材もあります。メロディや語呂合わせを使うと覚えやすいでしょう。
見え方に違いがあるのか、手先の不器用さなのか、記憶の難しさなのかで、学習方法は異なってきます。
大切なのは子どもの覚えやすい方法を否定せず、学びのペースに合わせていく事です。
<学校で出来る学習の工夫>

「読み」への支援例
教科書や黒板の文字を読む時に、目で見て読むだけでなく、読む部分を実際に
指で押さえながら読むことで、読み飛ばしがないようにする。
定規や下敷きを一行ずつずらすことで、読む段を見やすくする。
文節の区切りを教科書に書き込んでおく。   など
「書き」への支援例
方眼のノートを使う事で、バランスの良い字が書きやすくなる。
板書の字を大きく、間隔をあけて書いて、見やすくする。
黒板の書写して欲しい部分に線を引き、書いてほしい箇所を分かりやすくする。
補助プリントやワークシートの使用により、写す部分を減らす(明確にする)ことで、
「書く」以外の学習に集中しやすくする。
デジタル機器を活用する。(iPadでの漢字学習を取り入れている学校もあります)
「計算」への支援例
九九表を使う事で、「覚える」事への不安が減り、算数そのものの理解が進みやすくなる。
計算機などの機器を活用する。

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